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Palmeso Times

Vol.091 どっちが上?/靭性試験は材料の何を測っているか

<本号の話題>
◆思いつくままに:どっちが上?
◆少し役に立つこと:靭性試験は材料の何を測っているか
 
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 コラム: 思いつくままに
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<どっちが上?>
 
20年ぐらい前にあった私の海での恐怖体験をお話します。
まだ1、2歳の長男を連れて海に遊びに行ったときのことです。
海水浴にはまだ早い5月頃、季節は春だったと思います。
海は穏やかで天気は心地よいほどに快晴。人出もありました。
水は冷た過ぎないが泳ぐにはまだ早いかというぐらいで、
波打ち際を一緒に歩いたり、膝位の深さの所まで抱えて入ったりして
海を体験させていました。
 
しばらく遊んだ後、浜辺の妻に子供は預けて貝、魚、カニでも採って
やろうと海を背に、水中眼鏡をかけ獲物を探していました。
すると突然周囲が暗くなり、なんだろうと振り返ると!?壁?
ではなくて見上げるほどの波が背後にありました。
「えっ?」と思った瞬間、叩きつけられるような感触の後、
前後不覚になりました。
 
直前まで足が立つほどの浅瀬にいたとは思えないほど
水の力は凄まじく、上下左右にランダムに体をネジ回され、
自分の腕が体に巻き付いては解けるを繰り返しました。
しばらくするとうねりが少し落ち着いたので上を目指さねばと
思いましたが、振り回されたおかげで方向感覚は無く、
周囲は巻き上げられた泥や砂で暗く光が見えません。
「なるほど。これは死ぬな。」と納得し、
さてどうしようかとも思案しましたが、
どうしようもないので力を抜けば浮くかもしれないと思い
体の力を抜いてなすがままに身を任せました。
運よく浮上することができ今に至ります。
子供を巻き込まずに済んだのが何よりでした。
 
雪国の長岡もすっかり雪が消え、また春がやってきます。
春の海は穏やかですが、時に牙をむくことがありますのでご注意ください。
 
>>それでも海が好きなヨシダ
 
 
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 コラム:少し役に立つこと
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<靭性試験は材料の何を測っているか>
 
「靭性」は物質の破壊に対する感受性や抵抗のことを言い粘り強さを示します。
対語の「脆性」は物質の脆さを表し
破壊に要するエネルギーの小ささを示します。
靭性と脆性は対語で脆性は脆さともいえます。
試験法は静的破壊靭性と動的破壊靭性が区別され、
実際の材料では両者の試験数値が大きく異なり
動的破壊靭性が小さめになるものが多いです。
静的試験法にはASTM E399のKIC試験があり き裂進展に対する
抵抗値を測り、これを基準とした相関試験法もいくつか存在します。
動的試験法にはシャルピー衝撃試験があり衝撃破壊の抵抗値を測っています。
 
平たく解説すると靭性は材料の降伏強さ×伸びの面積で
破壊までのエネルギー量を示し、エネルギー量が大きいと靭性が高く
エネルギー量が少ないと脆いとなります。
例えば一般的に鉄鋼材料は焼き入れと共に降伏点は上昇するが
伸びが少なくなり、結果硬さが上がり破壊靭性は低下する傾向にあります。
またセラミックスは極端に降伏点が高いが伸びはほとんどないことから、
硬いにもかかわらず破壊靭性は低く脆い材料とされています。
セラミックス材料は特に動的破壊靭性はさらに小さくなる傾向にあります。
加えて、内部欠陥や空孔などの存在量により同じ材料でも
靭性値は変化することから、材料の均一性などの評価にも利用されています。
 
MSE試験の球形粒子条件では試験結果から
近似的な脆性評価傾向が示されています。
特にセラミックス系では単結晶がチャンピオン数値になり
内部に欠陥が増えるほどに、また焼結など空孔が多くなるほどに
低下することが示されます。
樹脂系材料などにおいてもフィラーの混入した複合材料も
同様に低下したり逆に向上したりの傾向が示されます。
おそらく小さな球形粒子の衝突により比較大きな応力伝達範囲の中の
欠陥部から繰り返し衝突によるクラック進展による離脱速度が
大きくなるためと予想されます。
薄膜など計測が難しい材料のスクリーニングには有効な評価となります。
 
球形粒子条件の試験結果がご覧いただける事例はこちらです。
(球形シリカ、球形アルミナの結果にご注目ください)
○金属上の塗装の密着度合いの評価
 https://palmeso.co.jp/mse/case/archives/15
○「硬くて脆い」など材料の2面性強さの評価 MSEマップ
 https://palmeso.co.jp/mse/case/archives/12
 
>>とりあえず親方 松原亨

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