メールマガジン

Palmeso Times

Vol.050 アゲインストとフォロー/光学系コート成膜による基材樹脂への影響調査

<本号の話題>
◆思いつくままに:アゲインストとフォロー
◆少し役に立つこと:光学系コート成膜による基材樹脂への影響調査
  
============================================
 コラム: 思いつくままに
============================================
<アゲインストとフォロー>
 
今年、世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」を
完走した白石康次郎さんが話題になりましたが、
実は白石さんの師匠である多田雄幸さん(オケラ号で活躍)は、
パルメソがあります長岡市の出身です。
 
バブリーだった時代、私も海の遊びとしてヨットの操船を
某楽器メーカ主催のスクールに通って覚え、シーホッパーという
小さな中古ディンキーで楽しみました。
 
みなさん、ヨットの操船において、
向かい風と追い風どちらが操船し易いと思いますか?
世の中ではアゲインストよりフォローの風が吹くことが好まれますが、
実はヨットでは向かい風の方が船が安定して操船しやすいんです。
 
ヨットは風上に向かってジグザグに進むのですが、
この方向転換をタック、風下に向かう時の方向転換はジャイブと言います。
初心者は、タックの方が帆の動きも小さく、コツを掴むと意外と
簡単にできます。反対のジャイブは、大きく張り出した帆を反対側に
ギュンとまわしますので下手をすると船がひっくり返ったり、
意図せずジャイブ状態になってブーム(帆の下のバー)が頭に当たって
痛い思いをしたりします。
 
これを人生に当てはめると結構面白いです。
フォローの風の中、のほほんと生活していて、いきなりブームが
飛んでくるより、アゲインスト方向に向かってしっかりタックを
決めながら生きたほうが幸せな人生になるような気がしませんか!
 
ちなみに白石さんは、
「師匠の多田さんは、ほとんどヨットの操船は教えてくれなかったですが、
海の楽しみを教えてくれた」と語り、世界一周したヨットの名前には
「Spirit of yukoh(雄幸) Ⅳ」と師匠の名前が刻まれています。
 
>>パルメソの小野田坂道こと田村敏則
 
 
============================================
 コラム:少し役に立つこと
============================================
<光学系コート成膜による基材樹脂への影響調査>
 
昨年10月末に日本電子(JEOL)さんのオンラインセミナーの中で
AR成膜時の樹脂基板ダメージ評価としてMSE試験データを
紹介してもらいました。その後、何件かのお客様から
「同じようなデータを取りたいんだよね」と依頼を受けた事例を紹介します。
 
〇お問合せ内容
光学系コート膜の密着性評価を行っています。
密着性が弱いものはどうも樹脂基材表面の強さが変わっていると
思われるのですが、測る方法がありません。
変化している厚さは200~500nm?と薄いかもしれません。
MSE試験でならなんとか測れるのではないかと期待しています。
と依頼を受けました。
 
〇試験内容
サンプルは樹脂基材上に多層光学系コート膜(総厚数百nm)の構成で、
密着性が良いものと悪いものの2種類です。
 
〇試験条件
光学系コート膜表面から深さ方向に約5~10nmずつ、
コート膜を貫通して樹脂基材深さ1µmくらいまでの詳細な
強さ分布を測りました。
 
〇試験結果
・光学系コート膜の方が基材樹脂よりも強い。
・密着性が良いものと悪いもの共、基材内部よりも
基材表面部500nmくらいが弱い。
・弱い基材表面部は、密着性が良いものよりも密着性が悪いものの方が弱い。
・密着性が悪いものにはコート膜と基材の界面部に弱さのピークがあり、
強さの落差が大きい。
・密着性が良いものは基材表面部の弱さは深さ方向にほぼ一定。
 
予想していた通り密着性が悪いものは樹脂基材表面が極端に
弱くなっていることがわかり、その差が数値化で明確になり良かったです。
密着が良いものも基材内部より表面が弱いことも
興味深い結果となりました。継続して評価することで
最適なコート条件が求められますと喜んでいただきました。
お役に立てて良かったです。
 
【参考になる試験事例】
市販メガネレンズのコーティング膜強さ分布調査
https://palmeso.co.jp/mse/case/archives/8
 
TiO2光学薄膜の超精密膜質(強さ)分布調査と比較
https://palmeso.co.jp/mse/case/archives/7
 
>>パルメソの炭治郎 石附尚

メルマガバックナンバーに戻る


Page
Top