事例閲覧
Case Study
高分解能が必要な光学薄膜(TiO2)の強さ分布調査
目的
・5種類の成膜プロセスを変えたTiO2膜の膜質の差を可視化比較する。
・精密な2条件試験でわずかな膜質の差を捉える。
・単結晶ルチル強さと比較し強さの位置付けを評価する。
試料及び試験条件
サンプル
下表に示す基材BK7上のプロセス条件違いTiO2薄膜
試験条件
超精密2条件試験
硬さやヤング率系強さ試験条件・・・多角アルミナ0.3μm粒子
靭性や衝撃耐性系強さ試験条件・・・球形シリカ1.0μm粒子
試験結果
2条件による試験結果を下記グラフに並べて示す。深さはナノメートル単位
多角試験:エロージョン率分布グラフ
球形試験:エロージョン率分布グラフ
試験の信頼性
多角試験・球形試験の両者とも膜強さは大きな変化を示すが基材BK7は同じ強さを示している。
蒸着法違い
多角試験・球形試験共に比較IAD法の膜が強い。強さのチャンピョンはいずれもルチル単結晶になっている。
基板温度
IAD法及びEB法ともに基板温度が高いほど強くなる。この傾向は多角試験・球形試験共に同じ傾向を示している。
膜厚
多角試験は高分解能試験で示され、膜厚はSEM観察膜厚とほぼ同等になっている。対して、球形試験の膜厚(ここでの膜厚はエロージョン率で強いと示されている厚さで有効膜厚と呼ぶ)は極端に薄く示され、特にIAD加熱無、EB150°、EB300°は強い部分が見られない。
基材界面
多角試験及び球形試験においてIAD加熱無、EB150°、EB300°に界面が弱くなっていることが示されている。球形試験では界面の弱さが顕著に出現している。
評価
強さに関して
ルチル単結晶が欠陥のないチャンピオン強さとすると、IAD300°が単結晶に近い強さを示し欠陥が少なく分子結合が強い膜になっていることを示している。
2条件試験の差
球粒子は切削刃を持っていないため、少し深い位置の強さの影響を受ける。
また内部の欠陥等の影響も大きく受ける。その結果が膜厚や強度に違いを生む因子とされている。
界面と膜厚
界面部が弱くなっているものがある。これは初期蒸着が正規の分子構成になっていないことが想定される。
正規でない構成時には基材の表面にも影響を及ぼしていることが想定され、球形試験の界面弱さが基材まで深く及んでいる結果として示されている。
その結果、有効膜厚は薄くなり、特に球形試験では界面の弱さが膜強さに影響している様相が有効膜厚が薄くなることに現れている。