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Case Study
2種類の超硬チップ表面コーティングの膜性質分析と耐久性考察
目的
・膜の多層構造を強さ基準で特定し、設計値との比較評価を行う。
・膜強度の分布から耐久性につながる因子等を考察する。
試験条件
・試料:鋳鉄加工用超硬チップの2種類(A・B)
・試験条件:2条件試験(硬さ系と靭性系:多角と球形粒子)で全層分布を取得
試験結果
2条件のエロージョン率分布をサンプルA(赤色凡例)とサンプルB(青色凡例)を並べて示す。
多角試験のエロージョン率分布グラフ(硬さ系)
球形試験のエロージョン率分布グラフ(靭性系)
・多角試験と球形試験では膜構成が同じにもかかわらず、エロージョン分布の形態が大きく異なっている。
・多角試験では分解能が高く膜構成や膜厚を正規に示し、サンプルAとBの分布は異なる。
・多角試験からサンプルA,Bともに大きく2層構造の被膜であることが解かる。
・球形試験では表面部を除き膜全体が弱い(脆い)様相を示し、特にサンプルAは顕著に示されている。
・球形試験では下層の脆さの影響を受けて表層膜の膜厚が極端に薄くなっている。
試験から見える耐久性評価
本試験では膜性質としての評価に絞る。チップとしての耐久性は切削試験が必要となる。
・多角試験(硬さ系)から表層膜よりも下層膜が硬く基材の超硬はより硬いことが示されている。しかし、球形試験(靭性系)では表層膜が粘く下層膜は比較脆い、基材は表層膜よりも脆いことが示されている。
・多角試験でサンプルAはサンプルBよりも表層・下層共に硬いが、球形試験では表層の膜厚が確保されるのはサンプルBで耐久性に影響する因子となる。
・結果としてサンプルBの方が断続切削用チップの被膜として耐久性が良いとの評価になった。
まとめ
実際の切削試験からもサンプルBの耐久性が高かったとの報告を受けた。
下層膜は硬さのみでなく靭性の強い膜にすることで表層膜の性能を向上できることが示唆された。