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Case Study

PBT樹脂 加速劣化 熱劣化 紫外線劣化 湿熱劣化 強さ変化 熱可塑性樹脂

PBT樹脂の劣化変化と強さ変化の評価

目的

・耐熱・対絶縁性用途のPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂の各種環境試験での劣化特性評価
・異なる3種類の環境負荷で、それぞれ負荷時間を変えた場合に強さの変化様相を把握する

試験条件

・樹脂:PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)
・処理:3種類
  【熱(140℃) 24/72/120hr】
  【紫外線(カーボンアーク) 300/600hr】
  【湿熱(PCT試験 140℃相対湿度75%) 24/72/120hr】

試験結果

環境試験後の試料表面観察結果

表面形態観察[ 光学顕微鏡 ]
mse_003_01.png


熱と紫外線照射では外観の変化は見られない。
湿熱では表面にクレータ状の斑点が多く発生している。

 

MSE試験結果

各種環境試験の強さ分布を示すエロージョン率分布を一堂に示す。

エロージョン率分布グラフ
mse_003_03.png


熱劣化  :72Hrにおいても強さ変化はわずかで内部まで均一な変化形態を示している。
紫外線劣化:表層部が大きく内部に行くほど小さな強さ変化形態を示し、表層部の変化量は多い。
湿熱劣化 :他の環境試験よりも極端に強さ変化の進行が速い。 表面から内部まで平均した強度低下様相で72Hrと120Hrでは大きく変わらず劣化の臨界に達している様相を示している。

 

数値化と評価

深さ100μmまでのエロージョン率を平均化して劣化時間とエロージョン率平均の関係をグラフ化した。

劣化時間とエロージョン率の関係
mse_003_02.png

表面~内部の平均エロージョン率で比較


熱と紫外線の変化度合いに比べて湿熱が高速変化することが見て取れる。

まとめ

・MSE試験で環境試験による強さ変化形態(低下度と分布形態)を正確に把握できる。
・熱による劣化は内部まで強さ低下を促進する形態をとる。
・紫外線による劣化は表面部の強さ低下が顕著な形態をとる。
・湿熱による劣化は強さ低下が著しく促進され、内部まで均等に低下する形態をとる。

参考:硬さとの相関

劣化後の検体表面をナノインデンテーションのマルテンス硬さを計測しエロージョン率と比較を試みた。

◆ナノインデンテーション 押し込み深さ ⇒ 3μm 
◆MSEエロージョン率 ⇒熱劣化・湿熱劣化は全体平均値
               ⇒紫外線劣化は 表層と内部に分割

ナノインデンテーションとMSE試験の関係
mse_003_04.png


熱と紫外線及び湿熱24Hrは時間とともに硬さが上昇し見かけ強くなる。しかし、エロージョン率が大きくなる(弱くなる)傾向を示している。酸化による低分子量化又は結晶化によって硬さは大きくなるが、硬化による靭性が低くなって脆くなる傾向であることが示唆される。(カルボン酸生成量が増えたともいえる)

湿熱24Hrを超え72Hr-120Hrになると硬さが低下しエロージョン率が上昇(弱くなる)することから、極端な脆弱化が始まっていることが示唆される。(写真観察からもクレータ状が見える)

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