加工メカニズム

1マイクロメートル以下という小麦粉より小さい微粒子と水が混合されたスラリーが、ノズルよりおよそ100m/secという新幹線並みの速度で投射され、試料表面に衝突します。
「粒子」は、サブナノレベルの研磨を連続発生させる役目を担います。 「水」は、①熱を奪い取り試料を変質させない、②衝突粒子の洗浄、③安定した流体制御、といった役割を担います。「空気」は、短時間で高速加速させる役目を担います。
このような複合機能で変質が発生しないサブナノメートル研磨が成り立っています。
噴射ストリームは霧状の高速流れで、衝突時の圧力はエアーが当たったのと同じくらいの強さなので試料を破壊しません。

PERETが実現したこと

誰でもナノメートルの精密研磨の実現

上記のメカニズムにより2mm面積をほぼ全体均一にナノメートル研磨できる為、簡単な操作だけで 、スクラッチや異常研磨の筋を出すことなく「誰でも」サブナノメートル研磨ができます。

高速研磨を実現

ナノサイズの分解能を実現する研磨にイオンミリング法がありますがその加工速度に比べて早く処理できます。
単位時間に当たる粒子の数が圧倒的に多いため、連続した粒子衝突の繰り返しが研磨精度を落とさないまま深さ進行の速度を早くできる理由になります。

ナノメートル表面粗さの実現

本研磨法では粗さが完全にゼロにはなりませんが 、ナノメーターレベル以下の連続した表面に仕上がるため、分析に大きな影響は起こしま せん。
1秒間に1千億個もの粒子が当たると自動的に小さな凸凹の連続体で方向性がない(無方向性)均一な表面になります。投射速度を落すことで粗さをより小さくすることもできます。

深掘研磨の実現

PERETの研磨深さは加工速度と投射時間で決まります。深さを出すには単純に時間を掛けます。
しかも、投射した粒子をスラリーポット内に回収、循環させ繰り返し使うため、中断させずに長時間連続して研磨が行えます。
例え8時間掛けようとも粒子が磨滅せず、研磨速度が落ちないようにセッティングされています。

複雑形状物も研磨

粒子投射ではノズルから飛び出した粒子は自由であり、形状にならい均 一に衝突して研磨を行えます。
ゆえに実物試料の表面形状や内部構造を問わず、素地試料をそのまま処理することができ、短時間で簡単に観察や分析用の試料ができます。

未経験者でも精密研磨加工ができる

研磨部はすべて機械が制御し、その研磨精度はサブナノメートルです 。
作業者はスラリーを作成して装置にセットし 、目的の深さになるように材料の研磨レート表から選択・計算し投射時間を入力した後に研磨スタートするだけです。研磨が足りない場合などは追加研磨を行い観察に適したところで観察分析に回すだけです。
したがって材料や目的に合わせての知識や経験は少し必要ですが、熟練した技能は必要なく、学生レベルでも精密研磨加工が可能になります。

技術Q&A

なぜ高分解能なのか

PERETの研磨はエロージョン(粒子による摩耗)によるものです。微粒子(例えば粒子径が1ミクロン)が試料表面に高速で衝突して発生する衝突痕はナノメートルサイズになります。仮に試料表面全面に均等に微粒子が一個ずつ当たったとすると、摩耗深さ(削られた深さ)は1ナノメートルになります。このようにエロージョンを精密に制御することで高分解能を実現しています。

なぜ素人でも変質を起こさずに 前処理ができるのか?

前処理加工により変質を起こしたら観察や分析で何を見ているかが判らなくなってしまいます。材料の変質は大別して化学的変質と物理的変質があります。
まず、化学的変質の大きな原因としては熱の発生があり、一般的な加工である切削や研磨では極表面に1,000度を超える熱が発生します。また原子が作用する化学エッチングやイオンエッチング及び光エッチングはそのエネルギー単位がエレクトロンボルト(eV)と超高エネルギーで様々な反応を引き起こしやすくなっています。
本技術の粒子投射加工はドライ状態で行うと火花が出るくらいに高温になりますが、PERETは粒子と水を同時に投射することで水が瞬間に表面を冷却し高温にならず、化学的変質が少なくなっています。
次に、物理的変質は塑性変形や内部応力の発生などが主な原因ですが、それを極小にすることは可能です。PERET研磨は観察や分析の分解能以下であれば検出できないレベルの極小な変質に留めることができるため変質の発生は少なくなっています。

なぜゴムや樹脂を研磨できるのか

既存の研磨法でゴムや樹脂が研磨できない理由は、弾塑性(力を加えると変形する)を有する材料であるからです。機械的な加工をしようとすると加工の力によって変形してしまい、変形の大きいものになると加工すら困難です。
しかし、これらは刃物では切ることができ、タイヤのようにエロージョン(粒子状の摩耗発生)に長期間さらされると摩耗します。このことから極端にとがった刃先による応力集中や高速な衝突によっては加工できることがわかります。PERETは微粒子の速度が100m/sec(時速360km)もの高速衝突によって研磨するメカニズムを採用しており、柔らかい材料でも研磨が可能になります。
微粒子1個の衝突は数ナノメートルの研磨ですが数百〜数千憶個の衝突によって高速な研磨で均一な表面を得ることができます。

基礎的加工データ

参考標準研磨速度で示されています。必要な加工深さを研磨速度で割ると加工時間の目安ができます。様々な材料により速度が異なり事前に試し研磨にて速度確認後に正規の前処理 加工を行うステップがおすすめです。

エロージョンの豆知識

「エロージョン」は物理分野の専門用語として使われ、「ものが衝突や接触をして破壊されたり摩耗する様」を表す言葉で、宇宙から原子レベルまでの広い範囲に用いられています。 PERETで使われるエロージョンはミクロな粒子が高速に衝突してミクロな損傷(摩耗)を発生する現象を示し、精密な分野に限った狭い範囲に限定されます。また繰り返し衝突による損傷(摩耗)が進み、深くなる様を「エロージョンの進行」と表現しています。