多層膜は大きく単層が厚いものと薄いもの構成されている違いがあります。塗装等の塗布方式や一般メッキは各層が1µm以上あり厚膜多層膜となります。メガネや光学レンズやスマートフォンに使われているUV、IR、AF膜は蒸着法式が多く薄膜多層膜になります。
切削工具の被膜はCVD、PVDによる硬質な薄膜多層膜が多くマルチレイヤーと呼ばれるものも作られています。このような膜の全体特性は従来の機械特性試験で確かめられ、膜厚等は通常切断した断面の分布を観察することで確かめられています。
最近はより高度の膜開発を目的として劣化特性を確認する場面が増えており、このような評価には各層単体の強さの特定をする要求が高まっています。時には各層の界面強さの特定や作成された膜質が設計と同じになっているかなどの評価の要求にもなっています。
多層膜の其々の膜の強さを特定するに表面からエッチングをかけてその深さポイントを計測する方法が考えられます。MSE試験法はエッチングに粒子エロージョンを使いエロージョン速度が即強さの尺度になる試験法でその分解能は最少10nm単位にもなります。仮に各層のエロージョン速度が明確であれば(材質違いの強さが明確なら)各層の厚さと強さを同時に得ることができます。ただ、これまでの実例から10層以上の多層膜や単層膜厚が50nmや同質の多層膜は不得意となりそうです。