光学薄膜を多角アルミナ粒子と球形シリカ粒子の2種類の粒子で試験を行うことにより、今まで以上に超精密な膜質の分析が可能になりました。その試験結果の概要を下記に記載いたします。
目的
僅かな膜質の差を、2種類の試験条件を⽤いて浮き彫りにする。
サンプル
成膜プロセスを変えたTiO2膜を用いて膜質の差を比較する。
膜材質 | 成膜法 | 基盤温度 | 設計膜厚 | 基板材料 |
---|---|---|---|---|
TiO2 | 電子ビーム蒸着法 EB(Electron Beam) |
150℃ | 1.0μm | 光学ガラス BK7 |
300℃ | ||||
イオンビームアシスト蒸着法 IAD(Ion beam Assisted Deposition) |
加熱無し | |||
150℃ | ||||
300℃ |
試験結果
2種類の試験結果エロージョン率(損傷速度)分布グラフでみる
1、試験粒子 多角アルミナ粒子 d50=0.3μm
高硬度超微小径多角粒子を使用。
衝突時の荷重、接触面積ともに極めて小さいため力が集中する。
試験結果エロージョン率は膜を構成する材質そのものの強さを示す。また深さ⽅向の強さ分布を超高分解能で表示する。
2、試験粒子 球形シリカ粒子 d50=1μm
低硬度 微子球粒子を使用。衝突時荷重が大きいが、接触面積も大きいため力が分散される。
試験結果エロージョン率は膜全体のマクロな強さ(脆さ)を示す(結晶粒間の結合強度、クラック、ボイドの影響を反映)。
評価
- IAD_150℃、300℃の膜は、多角粒子の試験から材質的に強く、かつ均質である。 また、球形粒子の試験から他の膜に比べて強靭であると⾔える。
- EB_150℃は、多角粒子の試験では材質的に5種類の中で最も弱く、不均質で界面近傍に弱いピークが存在。また、球形粒子の試験では、内部分布は見えないほど一気に損傷し、他の膜に比べて脆いことがわかる。
- EB_300℃とIAD 加熱無は、多角粒子の試験では材質的には基材と同じくらいの強さである。しかし、球形粒子の試験では、表面に僅かに強い部分はあるが膜全体として脆いと言える。
- 2つの試験から膜材質の強さ・均質性と膜の強靭さが浮き彫りとなる。
- 成膜法としてはIADの膜の方がEBより強い傾向がある。
- 基板温度の上昇に伴い、均質で強い膜ができる傾向がある。
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