これまで、鉄鋼系焼入れ材料はMSE試験を含む粒子投射でのエロージョン量と硬さ試験に相関が取れなかった。 図1、2に示す結果の様に純金属は硬さとエロージョンの相関があるが、焼入れ材のエロージョン量は硬さが変化してもほぼ同じであることが示されている。
【図1】熱処理材のMSE試験結果
【図2】エロージョン量に及ぼす金属試験片の硬さの影響 (60メッシュのシリコンカーバイト) 出典:(社)腐食防食協会「エロージョンとコロージョン -流体による材料の浸食-」1987
粒子衝突展に起こるエロージョンメカニズムを研究した結果、焼入れ組織等に関係する因子の特定が出来たことで、新たに焼入れ硬さとMSEエロージョン速度(エロージョン率)が相関する試験条件を見い出した。 図3に市販されている硬さ試験片(SK85)を対象に新条件でMSE試験を行った結果を示す。 それぞれの硬さ試験片は表面から深さ方向に直線的にエロージョンが進行していることから硬さが深さ方向に均一に分布していることを示している。 また、硬さ違いでそれぞれが異なるエロージョン速度(エロージョン率)になっている。 上記グラフより導き出したMSEエロージョン率とビッカース硬さの相関を図4に示す。 硬さが硬くなるに従い、エロージョン率が小さくなっている関係が示されている。a 硬さが硬くなるとエロージョンが進まなくなっている関係、すなわちMSE試験で硬さを特定出来ることになる。
【図3】硬さ試験片におけるエロージョン進行
【図4】MSEエロージョン率とビッカース硬さの相関
この結果をエロージョン率(硬さ)に変換したグラフを図6に示す。 表面に軟らかい部分があり、深さ4µmで最小エロージョン率(最大硬さ)になり、その後15µmまでエロージョン率が大きくなり(硬さが低くなり)、その後一定になっているとの計測結果となった。
【図5】塩浴窒化のエロージョン進行グラフ(試験装置から得られる一次データ)
【図6】塩浴窒化のエロージョン率(硬さ)
深さ2µmで最小エロージョン率(最大硬さ)になり、7µmまで一定で、 その後15µmまで徐々にエロージョン率が上がり(硬さが軟らかくなり)、その後一定になっているとの計測結果となった。
【図7】プラズマ窒化処理材のエロージョン進行グラフ(試験装置から得られる一次データ)
【図8】プラズマ窒化処理材のエロージョン率(硬さ)
深さ8µmで最小エロージョン率(最大硬さ)になり、12µmまで一定で、 その後20µmまで徐々にエロージョン率が大きくなり(硬さが低くなり)、その後一定になっているとの計測結果となった。
【図9】ガス窒化処理材のエロージョン進行グラフ(試験装置から得られる一次データ)
【図10】ガス窒化処理材のエロージョン率(硬さ)
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